03.企業経営の本質(その2)
では企業経営は本来どうあるべきか?まずは何の分業の場なのか、自分のコミュニティを定義することです。何を強みにして、誰のどんな幸せを作ろうとしているのか?そのために誰と協力すべきか?これが「外向きの戦略」です。誰のどんな幸せを作ろうとしているのか?は、ターゲット顧客、未充足ニーズ、提供価値、マーケティングミックスなどから構成されます。誰と協力すべきかは、バリューチェーンにおける自社の位置付けです。最後に、何を強みにしては、コアコンピテンス、競争優位性の定義です。自由主義ですから強みがなくとも分業の場を作ることは可能ですが、競争主義により強みがなければ早晩退出を余儀なくされます。
次に、この「外向きの戦略」に賛同して苦労する人に集まっていただく必要があります。苦労の拠出の形態は、過去の苦労から得られた幸せを人に託す株主/寄付者と、自ら労働を提供する従業員の2つに分類できます。どんな株主/寄付者から苦労を提供していただくかは「財務戦略」、誰に労働力を提供していただき、個々人に何をしてもらうか、そして生産性を上げるためのプロセスや役割・タスク分担、作った幸せと交換で得られる対価の分配の仕組みの設計を「内向きの戦略」と呼びます。
最後に、外向きの戦略/内向きの戦略を実際に運営する仕組み、つまり人の採用・配置・目標設定・育成・処遇などの人事・教育制度、個人の知恵を組織の知恵に変換するナレッジマネジメント、個々人の自発的行動変革の仕組み、そして外向きの戦略・内向きの戦略を含めてこれらの仕組みを使いPDCAを回す仕組み全体を「マネジメントシステム」と呼んでいます。
「受幸者人数 x 幸せの大きさ / 幸せを作る工数 x 苦労の大きさ」の数値をできるだけ大きくするために、「外向きの戦略」、「財務戦略」、「内向きの戦略」を作り、「マネジメントシステム」により組織・個人のPDCAを回すことが企業経営です。PDCAのCつまりCheckは、幸せの受け手(顧客)と、幸せの作り手(従業員、外部協力者)の評価を外せません。幸せの受け手の評価は売上につながり、幸せの作り手の評価はコストにつながり、その差が利益となります。
ただし利益は企業経営の巧拙を計測する正確な指標ではなく、CSR指標の近似指標として作られたものであり、利益を上げているのが、必ずしもよい企業とは言えません。つまりCSR指標を企業の巧拙の指標とし、その上で利益を上げることが、企業経営者に求められています。かつて議論があったような、ルールの隙間を縫い、不備をついて、利益を上げて何が悪いという人は、企業経営者の資格はありません。